ブテリン氏、「The Scourge」でイーサリアムの中央集権化リスクに対応
イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)における中央集権化のリスクについて、新たなブログ記事で警鐘を鳴らした。
経済的な圧力が大規模ステーカーによる支配を促進し、51%攻撃や取引検閲、不公正な価値抽出といった問題が発生する可能性があると警告した。
「The Scourge」の概要とリスク
2024年10月20日に公開された記事で、ブテリン氏は「The Scourge」と名付けたイーサリアムの未来像を紹介。
このシナリオでは、経済的に強力な大規模ステーカーがネットワークを支配し、小規模ステーカーは巨大なステーキングプールに参加することを余儀なくされるリスクが指摘されている。
さらに、大規模ステーカーはMEV(最大抽出可能価値)アルゴリズムを駆使し、ブロックごとに高い収益を得るため、ブロック構築が中央集権化する恐れがあると述べた。
また、流動性のあるステーキングトークンの提供は、資金のロックアップを回避できるため、これも小規模ステーカーにとって不利な状況を生むという。
Possible futures of the Ethereum protocol, part 3: The Scourgehttps://t.co/mtzH1ZxTak
(I tried my best to be fair to all sides of the debates here!)
— vitalik.eth (@VitalikButerin) October 20, 2024
ブロック構築の役割分担による解決策
ブテリン氏は、ブロック構築とステーキング資本の提供における中央集権化を防ぐため、「Proposer-Builder Separation(PBS)」と「Attester-Proposer Separation(APS)」という役割分担の概念を提案。
これにより、大規模な経済規模のメリットを最小限に抑えることが目的とされる。
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PBS(提案者・構築者分離)
提案者(バリデータ)はブロックを提案する役割を担い、構築者は取引を選別してブロックを構築する。これにより、構築者がブロックを管理することで役割を分散させ、中央集権化を防ぐ。 -
APS(検証者・提案者分離)
バリデータの役割を検証と提案に分けることで、経済的なスケールメリットを抑制。これにより、バリデータ間の競争が緩和され、ネットワーク全体の分散性を高める。
エコシステム全体の調整
ブテリン氏は、未確定取引を一時的に保持する「暗号化メンプール」の活用を提案し、取引の操作を防ぐ必要性を強調した。
また、過度なステーキングを抑制するため、イーサリアムの発行曲線を調整することも示唆している。
さらに、リスク負担型とリスクフリー型の二層のステーキングモデルを導入し、中央集権化の防止を図る提案も行った。
- リスク負担型ステーキング:高リターンが得られるが、誤操作によりペナルティ(スラッシュ)が発生するリスクがある。
- リスクフリーステーキング:低リターンだが、安全に参加できる。リスク負担型にはETHの上限が設けられるが、リスクフリー型は無制限で参加可能。
MEV収益の透明化と今後の展望
MEVの収益をプロトコルレベルで透明化し、参加者間で公正に分配することも提案された。これにより、中央集権的なMEV抽出のインセンティブを削減し、ネットワーク全体の健全性を保つことが目指されている。
今回の「The Scourge」に先立ち、ブテリン氏は「The Surge」と題した記事で、レイヤー2の拡張技術を活用し、1秒間に10万件以上の取引を処理する能力の向上を目指していることも発表している。
分散性と拡張性の両立を目指して
ブテリン氏の提案は、イーサリアムの将来において分散性と拡張性を同時に実現するための取り組みを示している。
ステーキングの中央集権化を防ぐための役割分担や、透明性の向上を通じて、ネットワークの信頼性を確保することが求められている。
今後のイーサリアムの発展において、これらの提案がどのように実現されるかが注目される。
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